【連載:歴代ファイナリストの声】vol.3 オリィ研究所 吉藤健太朗
吉藤健太朗(よしふじ・けんたろう)
ロボットコミュニケーター
株式会社オリィ研究所 代表取締役所長
夢AWARD歴代のファイナリスト達は、夢を仕事にして輝く人ばかり。夢AWARDにエントリーして良かったことや、主催の渡邉美樹から学んだこと、また夢を叶えるのに大切なことを聞く「歴代ファイナリストの」シリーズ。今回は、みんなの夢AWARD4のグランプリ、吉藤健太朗さんにお話を伺いました。
――吉藤さんの現在の事業と、事業を始めたきっかけについて教えてください。
私は小学五年生から中学二年生までの間、不登校で自宅に引きこもっていました。そして中学二年生の時、気づいたら池の前に立っていたことがあります。体が死にたがっていることに気付いてハッとして、死なないための理由を必死で探しました。見つけたのは折り紙でした。
折り紙を折って人にプレゼントすると、「ありがとう」と喜んでもらえました。それで生きようと思えたのです。それまで自分は周りの人に「ありがとう」と言ってばかりの日々を送っていたのですが、「ありがとう」という言葉は、言うことと言われること、循環させなければダメだと思うんです。言われっぱなしでも言いっぱなしでも、やがて辛くなることもあるのです。折り紙を作って、「ありがとう」が循環を始めてから、ものづくりに目覚めたのではと思います。
高校時代にはものづくりの巨匠、久保田憲司師匠に師事しました。電動車椅子の新機構の発明をして、国内最大の科学コンテストである「高校生科学技術チャレンジ・JSEC(Japan Science & Engineering Challenge)」で、文部科学大臣賞を受賞しました。また、世界最大の科学コンテストである「国際学生科学技術フェア・ISEF(International Science and Engineering Fair)」でGrand Award 3rdも受賞しました。その後いただいた多くの相談と自身の療養経験から、孤独や寂しさをなくすことが夢になりました。孤独は、小、中学生の頃、引きこもってどこにも行けなかった時に、特に強く感じていた感情でもあります。
そして2012年にコミュニケーションロボットのOriHime(オリヒメ)を開発しました。OriHimeは、人工知能のロボットではありません。距離や身体的問題によって行きたいところに行けない人が、カメラ、マイク、スピーカー、インターネットを使って操作するもう一つの身体です。
自身の分身となって周囲を見回したり、隣の人と「あたかもそこにいるように」会話することができるのです。たとえばALS(筋萎縮性側索硬化症)など難病の方、身体的、精神的に学校に足を運べない子どもたち、育児や保育、怪我や病気、様々な理由で出勤できない方たちなど、幅広い分野で多くの人々に活用されています。
――夢アワードに出て得られたものはありますか?
渡邉美樹代表が主催されている「みんなの夢AWARD4」で、「家や病院のベッドから動けなくても、『会いたい人に会え、行きたい所に行け、社会に参加できる』未来を創る」という夢を語りグランプリをいただいてから、三鷹にオフィスを構えることもできて、仕事の効率も上がりました。夢に向かってより進める状況が整いました。
――吉藤さんが思う、夢を叶えるのに大切なことは何でしょう?
「成功の秘訣は?」と時々聞かれるのですが、私の中に成功や失敗の概念はあり
ません。ビジョンを達成できたら成功なのかもしれませんが、それまではただただ、トライアンドエラーの連続があるだけです。学校の勉強とは違って、走りながら勉強しています。最初はPlan(計画)してDo(実行)してだったのが、今ではPlanする前にDoしています。そして改善していく。その繰り返しです。
私は自分が経営者になるなんて想像していなかったのですが、勘違いする力は必要だなと思います。「俺ならできるかも。経営とかもやってみても大丈夫かな」と思って始めました。経営や新しいことを始める時に、慎重になり過ぎている方は、まず、「自分はできるのだ」という勘違いする力が大事なのではと思います。「後先考えずに」だとまずいですが、まずは勘違いでもいいから一歩踏み出すことで見えてくるものがあるのではないでしょうか。