ファイナリストインタビュー特集VOL.1:中村 朱美さん
2019年2月25日に舞浜アンフィシアターで開催される「みんなの夢アワード9」。
300人を超える応募者の中から、3次選考を勝ち抜き見事ファイナリストに選ばれた7名はどんな方たちなのでしょうか。
みんなの夢をかなえる会の事務局では、「なぜその事業を行うのか」、
夢の背景にあるファイナリスト達のストーリーを取材しました。
第1回目は京都で一日百食限定の「佰食屋」を経営する中村朱美さんをご紹介します。
中村 朱美
「飲食店働き方改革!朝ご飯も晩ご飯も家族で食べられる働き方を全国へ!」
飲食の常識を覆した経営方針
2012年、中村朱美さんは夫の剛之さんと共に「佰食屋」を創業した。大切にしていることは、働く従業員たちが「家族で晩御飯を一緒に食べられること」。そのために売上増や多店舗展開は捨てている。営業はランチのみ。1日の販売数は店名の通り100食に限定。売り切れ次第終了。万一売り切れなくても、定時になったら全員が帰宅する。
最初のころはお客さんが20人しか来ない時もあったが、Yahoo!の地域ニュース欄で紹介されて以来、売り切れない日がほとんどない行列ができる店になった。
朱美さんはホテルのレストランで働いたことのあるご両親から、「飲食店は長時間労働やし辛いからやったらいかん」と過去に言われたことがあるという。その飲食店の常識を覆した。
残業ゼロの働きやすい環境で、シングルマザーや障がい者、高齢者の方たちもイキイキと働いている。まさに働き方改革のロールモデルとも言えるべき存在で、Forbes JAPAN Woman Award 2018では新規ビジネス賞を、『日経WOMAN』ではウーマンオブザイヤー2019の大賞を受賞。フジテレビ系列の『セブンルール』に出演などメディアからも引っ張りだこだ。
きっかけは夫のステーキ丼
そんな朱美さんは、家族を大切にする二児の母でもある。笑顔が印象的だが、「昔はストイックで人を寄せつけない雰囲気を出していた」という。
朱美さんをいつも笑顔な女性に変えたのは、夫の剛之さんだ。「私は夫を一番尊敬していて、大好きなんです」と朱美さん。なんと佰食屋は、剛之さんの作るステーキ丼が美味しすぎて、「私だけが独り占めするのは勿体ない!みんなにも食べてもらおう」と思ったところから始まった。
事業に失敗したら剛之さんはタクシー運転手、朱美さんは塾講師の仕事をしようと覚悟を決めてのスタートだった。「人生楽しかったら乗り越えていけるから笑っていこう」と笑う剛之さんの存在が、朱美さんの笑顔のモチベーションになっている。
災害でダメージを受けて出た、意外な答え
だが創業から6年目にして、初めて笑顔になれない時期があった。2018年6月に大阪北部地震があり、続けて西日本は豪雨に見舞われた。経営はこれまでで一番のダメージを受けたという。ようやく立て直しをはかれた9月。台風21号で関西国際空港が浸水。客足は半分に減った。
朱美さんは考えた。今後も災害や思わぬ出来事は起こるだろう。100食だとダメージを受ける可能性があることがわかった。何が起こっても経営がブレないようにするには……。そして出た答えは、「売上を減らす」。
普通なら、200食、1000食と事業を拡大していくことを考える。だが朱美さんは違った。「そうだ、これからは半分にしよう」。
50食なら、スタッフ2人で回せる。利益もそこまで減るわけではない。安定して低空飛行ができる。それが成功したら、全国に「働き方のフランチャイズ」を広げていきたい―
新しい事業は世の中の目にどう映るのか
そんな「五十食屋」の構想を練っていた矢先、Facebookの知人のシェアで、夢アワードのことを知る。エントリー締切の3日前。奇跡的なタイミングだった。新しい事業はみんなに応援してもらえるものなのか、世の中に受け入れてもらえるものなのか、試してみたい。応募受付が終わるギリギリにエントリーした。
夢アワードの主催が渡邉美樹だというのも決め手の一つだった。学生時代にテレビを見ていたとき、凄い居酒屋が紹介されていた。行列で待っているお客さんに、「ここでオーダーして飲んでいいですよ」とテーブルをお店の外に運ぶサービスに衝撃を受けた。後に渡邉の著書のタイトルにもなる「夢に日付けを」という言葉も心にとめていた。いつか会いたいと思っていた人だった。
「誰もが知る飲食店を長年経営し成功させてきた方から、利益を追求しない私たちのやり方がどう映るか聞いてみたいんです」と朱美さんは言う。やはり陳腐なアイディアだと思われるだろうか、それはそれで有りだと思ってもらえるだろうか。
「ファイナリスト全員の夢がすばらしい」
これまで数々の舞台に立ち賞をもらってきた朱美さん。だが、「コンテストにでるとき、優勝する自信はいつもない」という。ステージに立ったときに初めて、観客が自分のプレゼンにそれぞれの夢を乗せて聞いてくれているかがわかる。「だからステージに立つその瞬間まで全力を尽くします」と、プレゼンのブラッシュアップにも余念がない。
「ファイナリストの方全員の夢が素晴らしく、本当は順位付けできないのだと思います。
どの事業もすべて世の中に必要で、月商や年商の規模の違いはあっても、人々の役に立つボリュームは同じ。誰が優勝してもおかしくない。だからこそワクワクします。同じように夢に向かって突き進む仲間に出会えたことが、既に私の宝物となっています」と笑顔を見せた。
(取材:2019年1月 /ライター:教来石沙織)